2015年4月29日水曜日

【KPI分析(第3回)】DAUに代わるKPI編

ソーシャルゲーム(に限らずアプリ全般)のKPI分析講座、第3回目は「DAUに代わるKPI編」です。
1回目、2回目は下記をご覧ください。

【KPI分析(第1回)】用語解説編
【KPI分析(第2回)】DAUを狂わすノイズ編

前回の「DAUを狂わすノイズ編」では、ホワイトノイズやスパイクノイズによってDAU(daily active users)が増減してしまうということを書きました。
ゲームが面白いかどうか以外の部分でDAUは大きく変動してしまうので、DAUを指標にしていては、本当楽しんでいるユーザーがどれだけいて、どのような推移をしているのかはわかりません。

そこで、ホワイトノイズやスパイクノイズを取り除いた新たなKPIが必要です。
ただ、実際のところコレといった業界共通の指標というのは存在していません。
各社が自社のタイトルにマッチしたノイズの取り除き方を行い、それを指標としているといった感じです。

ここでは、その指標を公開している3社(現在はもっと洗練された取り方をしているかも)の例を取り上げます。

<コロプラ>
まずは、「白猫プロジェクト」や「黒猫のウィズ」などの超ビッグタイトル連発のコロプラさん。
コロプラさんはQAU(Quarterly Active Users)という指標を採用しています。


QAUとは、アプリをダウンロードしてから7日以上経ったユーザーを対象としたアクティブユーザーの値です。
アプリの継続率は、ダウンロード後7日間で急激に低下し、その後はある程度安定していきます。
なので、ダウンロード後7日間のユーザーを取り除くことで、定着したユーザーのみを抽出しています。
これにより、広告出稿などによる急激なダウンロード数の増加があり、DAUが跳ね上がっている場合も、QAUは7日後も遊んでくれているユーザーのみを抽出した値のため、ある程度安定した値になります。
ただ、この方法ではユーザーの気まぐれが起因しているホワイトノイズは取り除けません。
例えば、プッシュ通知などを行うと、休眠ユーザーが一時的にアプリを起動したりするので、QAUも一時的に跳ね上がってしまいます。

<gloops>
続いてブラウザソシャゲで一時代を築いたgloopsさん。ソシャゲのデータマイニングにおいては最初期から力を入れていらっしゃいます。
基本的にはコロプラさんと同じ考え方ですが、こちらの記事によると、gloopsさんの場合はゲーム開始後30日間というのを指標の区切りにしています。
過去30日間のログイン日数でユーザーを数段階に分類し、セグメント別にユーザー推移を見たり施策を検討したりしています。
さらに、ゲーム内のパラメータ(強さ)とクロスさせてセグメント化することで、「昔はハマっていたけど最近はあまりプレイしていない」といったユーザー層も可視化でき、より具体的な施策を行いその結果をウォッチすることができます。
ただ、このやり方はデータマイニングの非常に高度なノウハウや仕組み、人員が必要です。また、タイトルによって指標が異なるため、タイトルをまたいでの指標としては使えないので、簡単には導入できない(使いこなせない)方法だと思います。

<ドリコム>
最後はドリコムさんです。
ドリコムさんは、コロプラさんやgloopsさんの事例を参考に、さらにホワイトノイズを除去するために5日間連続でログインしたユーザーのみを抽出しています。
これにより、広告出稿により急激にDAUが上昇しても(スパイクノイズ)対応でき、気まぐれでログインしたユーザー(ホワイトノイズ)も除去された、純粋に毎日楽しんでいるユーザーのみを対象とした推移を見ることができます。
さらに、この指標でとれたユーザーの課金額が全体の売上の80%以上を占めているということで、売上に影響を与えるユーザーを常にウォッチできる非常に優れた指標だと言えます。
ただ、メンテナンスなどでログインできない時間帯があると、大きく下がってしまうので、5日間中4日間ログインしたユーザーを対象にするなど、さらなる試行錯誤をされているようです。

このように各社様々な「ゲームの面白さ」を測るKPIを検討しています。
ゲームのジャンルによってもそのKPIは異なるし、会社の規模(人員やお金)によっても使いこなせるKPIは変わってきます。
ただ、大事なのは数値を見ることではなく、その先にあるユーザーを見ることなので、そのあたりを忘れず自社にあったKPIを追求していくのが大切ですね。